いわゆる術後感染は、術野感染と肺炎や尿路感染などの術野外感染とに分けられますが、この術野感染が手術部位感染(Surgical Site Infection;SSIと略)となります。すなわちSSIとは、手術操作の直接及ぶ部位に発生する感染をさします。厚生労働省のサーベイランス事業としてデータ収集が行われています(6ヶ月毎に提出)。

SSIがあると、入院期間が延長し、医療費が増加しますが、SSIサーベイランスを行い、外科医に適切なデータをフィードバックすることで、SSIの発生率が減少し、医療費の削減にもつながるとの報告があります。当院では、SSIの発生率が比較的高い、消化器外科手術について、厚生労働省が行うSSIサーベイランス事業に参加しています。

SSIは、表層切開層SSI、深部切開創SSI、臓器/体腔SSIに区分され、術後30日以内までに発生した感染症と定義されています。SSI発症に関する危険因子(アメリカ麻酔医学会(ASA)スコア、創分類(術野汚染度)、手術時間)が定められており、厚生労働省からは、SSI全体のデータのほかに、危険因子に基づいて層別化した細かいデータもフィードバックされます。

SSIの発生は、上記の危険因子のほかにも、実際は、年齢、栄養状態、喫煙、貧血、糖尿病などの併存症の程度など、様々な因子が影響します。例えば、危険な併存症を持つ高齢者の方の、大腸穿孔などの汚染手術は、ほかに余病のない若い胃がん患者さんの予定手術よりも、はるかにSSIの発生率は高くなります。

QI指標で示される、臓器別のSSI発生率は、危険因子を加味していない全体のデータですので、他施設との単純比較するのは適切ではありません。当院の患者層に経時的変化がないと仮定すると、施設内の成績を年度比較する意義があり、SSI低減に取り組む契機になります。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と
分母・分子の項目名
解釈
分子 SSI発生件数 -
分母 消化器外科手術件数 -