糖尿病は慢性的に血糖値が高くなる病気で、進行すると多種多様な合併症を起こします。最近はマスメディアでも多く取り上げられており、糖尿病について広く知られるようになりました。しかし、殆どの患者さんは自覚症状に乏しく、自身が疾病・治療と真剣に向き合うことが難しい病気です。そのため、糖尿病のことを理解してもらうための教育、食事療法、運動療法が治療の大前提です。近年、続々と新しいタイプの糖尿病治療薬が開発され、治療の選択肢は増えています。それでも単に薬を使えばよいというのではなく、食事・仕事などの生活スタイルはもとより、家族構成や性格といった個々の患者背景を視野に入れた包括的な治療を行うことが求められます。

HbA1C(ヘモグロビン エー ワン シー)とは、過去1-2ヶ月程度の血糖の高さを反映する検査です。測定の仕方によって正常値は異なりますが、当院の採用している正常上限は6.2%となっています(糖尿病の診断基準HbA1c 6.5%以上)。HbA1cが低い値にとどまっている患者さんの割合が多い=病院全体の血糖コントロールが良好、ということになります。ただ、軽症の患者さんが多い場合にも同様の結果がでるため、重症の患者さんが集まる専門施設にとっては不利ということになります。そのため、他の施設との比較は慎重に行う必要があります。

当院は糖尿病専門医、CDE(糖尿病療養指導士)が県内でも充実している方の病院です。しかし、糖尿病の細小血管合併症(網膜症・腎症・神経障害)の発症・進展予防の目標値といわれるHbA1c7%未満の割合も、ほぼ正常範囲のコントロールであるHbA1c6.5%未満の割合も全日本民医連のデータの中央値より低くなっているのが現状です。

ただし、全日本民医連では1年を通しての集計で、当院は半年毎の集計としており、集計方法が異なります。厳密な比較は出来ませんが、目安として比較し当院の特徴や課題を探る手がかりにはなると思われます。

新規受診の患者さんが多ければコントロール良好な患者さんの割合は少なくなるかもしれません。また、生活自体がままならない貧困にあえぐ患者さんが多い場合もしかり・・・全日本民医連の中央値より当院の割合が低いのは患者さんの傾向の反映なのか、それとも治療体制の問題を抱えているのか、今後のこの値の推移を見ながら検討していく必要があります。また、HbA1c 8%以上の割合も比較検討することで全体像が見えてくるのも事実です。今後用いる指標をどうするかの再検討も必要です。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と
分母・分子の項目名
解釈
備考 収集期間:1~6月、7~12月 :半年に一回測定
分子 A) 最終検査値のHbA1Cが < 7.0%
B) 最終検査値のHbA1Cが < 6.5%
の患者数
近接診療所患者を含む
NGSP値で集計
分母 半年間で2回以上HbA1C検査した外来患者数 実患者数。近接診療所患者を含む。
医療の質向上・公開推進事業」データより
(全日本民医連 2013年83施設参加)
HbA1Cが < 7.0%
年度 最大値 中央値 最小値
2013年 93.7% 76.0% 39.9%
HbA1Cが < 6.5%
年度 最大値 中央値 最小値
2013年 84.8% 58.6% 28.5%