要約

わが国の急速な少子高齢化の進行および保健医療を取り巻く環境の変化に伴い、看護師確保の重要性は増大している。2009年に新人看護職員研修が努力義務化となり新人看護職員研修ガイドラインが策定され、当院もこれに基づいて新人研修プログラムを構築しているが、さらに効果的な研修の構築が求められている。

近年の当院の新人看護師の育成状況は、職場に適応できない、臨床実践能力修得の遅れ、夜勤独り立ちの遅れ(前年度夜勤独り立ち率: 11月36%、2月66.7%)などの課題があり、傾向としてはコミュニケーション力の不足、困難を乗り越えられない、メンタル面の弱さがある。今年度は新人看護師の早期夜勤独り立ちをめざすことを目標に、5つの具体策を立てて取り組んだ。

具体策1つ目は夜勤研修開始時期の7月から5月への変更である。夜勤も含めた1日の流れ・患者理解、経験値の上昇、そして各チームの役割と協働業務の理解が目的である。2つ目は日勤練習と夜勤練習を平行した実施である。3つ目は、社会人基礎力向上を目指した研修である。社会人基礎力とは、社会のなかで多様な人々とともに仕事をしていくために必要な基礎的な力であり、3つの能力と12の能力要素から成るものである。これらを向上させるための社会人基礎力集合研修、そしてチェックリストによる社会人基礎力の定期的評価(5、8、11、2月)を行った。4つ目は夜勤独り立ち基準の整備と徹底である。夜勤に入るための基準を明確化し、夜勤独り立ちチェックリスト作成、6月から全員毎月評価を行った。5つ目は、新人が苦手意識のある急変時(意識レベル低下時、BP低下時、SPO2低下時)の対応についてシミュレーション研修を行なった。

その結果、11月の夜勤独り立ち率は43%、前年比7%上昇した。 急性期病院として現場の忙しさが増し、育成の困難さも増しているが、今後も新人研修プログラムを構造、プロセス、結果の視点で評価し、さらに効果的な育成が図れるよう改善していく。