2022年度

2021年度(令和3年度)事業報告

2021年4月~2022年3月

設立趣旨と理念のもと、地域の医療・介護・保健福祉事業を「無差別・平等」の視点で事業を行っている。経営構造転換5ヶ年計画を引く継ぐ中長期構想を策定し、一人ひとりが人権と公正の視点で事業を進めている。

新型コロナウイルス感染症の蔓延が繰り返される中で経済は低迷し、生活保護や無料低額診療などのセーフティネットは重要性が増している。世界的な経済の低迷は原油をはじめとする原材料の価格を引き上げ、診療報酬や介護報酬を主な財源とする事業運営は厳しさが増している。

事業概要

1)患者の立場にたつ診療事業

坂総合病院は、塩釜地区休日急患診療担当二次病院施設として地域の輪番制を担っている。地域医療支援病院として、主に塩釜市、多賀城市、利府町、松島町、七ヶ浜町の2市3町にある病院との入院連携、坂総合クリニックは開業医との外来連携により地域の方々が安心して医療にかかれるように取り組んでいる。

長町病院は、回復期リハビリテーション病棟および地域包括ケア病床の活用で、急性期治療後の社会復帰に貢献している。外来では糖尿病をはじめとする慢性疾患医療、健診等保健予防事業に取り組み、また在宅療養支援病院(機能強化型)として高齢者医療と在宅医療を支えている。介護分野では通所や訪問でのリハビリテーション、「有料老人ホームはなみずき」を運営し療養や生活をサポートしている。

泉病院は、脳血管系疾患の診断と内科的治療、神経難病の診断とリハビリ、認知症の診断、整形疾患も含めたリハビリテーション領域で社会復帰を支援している。

古川民主病院は、宮城県第二次救急医療施設として大崎地域の救急医療を担い、大崎地域唯一の在宅療養支援病院(機能強化型)に介護医療院を併設し、在宅医療、入院医療、介護サービスを一体として提供している。

2021年度外来及び入院数(延べ数:人)
  外来患者数 入院患者数
法人総合計 373,308 200,371
坂総合病院 53,270 102,508
長町病院 37,770 44,280
古川民主病院 36,521 26,122
泉病院 33,979 27,461
診療所群 171,565  
歯科群 40,203  
2)生活困窮者への無料・低額診療事業

当法人は、第二種社会福祉事業として社会福祉法第2条第3項9号に規定する「生活困難者のために、無料又は低額料金で診療を行う事業(無料低額診療制度)」を、坂総合病院、長町病院、泉病院、古川民主病院、坂総合クリニック、坂総合病院附属北部診療所、くりこまクリニック、中新田民主医院の8事業所で実施している。

坂総合病院の無料低額診療の申請者は60代以降の年金受給者層が多く、年金だけでは生活が困窮している状況がみられる。また、50代の申請者も多く非正規雇用が目立つ。保険種別では国民健康保険加入者が半数を超える。糖代謝科や循環器科などの慢性疾患を抱えた患者や癌患者が多く、継続的または高額な医療費の負担を無料低額診療事業で軽減している。広報活動として、ハローワークや生活困窮者自立支援相談窓口、社会福祉協議会、地域包括支援センターに広報紙を置いていただいている。

長町病院では、大通りに面した南側の窓に無料低額診療のポスターを掲示している。また事業所内でも掲示場所を増やし、より多くの方に知っていただけるようにしている。医療費の支払いが滞っている患者には早めに制度説明を行っている。

泉病院では、ホームページや広報紙で広報するとともに敷地内に無料低額診療の看板を設置している。また、自治体の広報誌でも紹介いただいている。

古川民主病院は、地域住民の方々に広く認知いただくように広報紙を作成し、加美郡や大崎市の自治体、生活困窮者自立支援センター等に置いていただいている。また、大崎市内の災害公営住宅(4ヶ所120世帯)へのポステイングや患者会を通して配布している。

診療所群では、坂総合病院附属北部診療所では、経済的に困難を抱えている患者や利用者には窓口での説明や広報紙を渡している。くりこまクリニックでもポスターなどを掲示している。中新田民主医院は、広報紙に古川民主病院でも事業を行っている事を掲載し、加美町役場、加美町地域包括ケアセンター、小野田福祉センター、宮崎福祉センター、大崎市自立相談センターひありんく、大崎市社会福祉協議会の協力を得て窓口に広報紙を設置いただいている。また民間で「持ち帰りこども食堂」を行っている大名弁当(大崎市2店舗)の店頭での広報紙を配布いただいている。

2021年度の無料低額診療患者数(延べ数:件)
  無料低額診療患者数
法人合計 14,968
坂総合病院 9,764
長町病院 500
泉病院 290
古川民主病院 671
診療所群 3,743
3)保健予防・健康管理事業

健診活動とともに各種健診を実施し疾病予防事業を行っている。

坂総合病院は、一般健診、協会けんぽ健診、自治体の子宮癌検診や脳検診、育児健診、被爆者健診等も受け入れている。また、感染症予防事業費等国庫負担金交付要綱に基づく事業として、塩釜地域2市3町の自治体乳がん健診(がん検診推進事業)を行っている。国の風疹追加対策の風疹抗体検査や予防接種を行っている。新型コロナウイルス感染症の対応では、感染管理認定看護師が宮城県長寿社会政策課運営指導班に協力し、介護事業者、有料老人ホーム、高齢者施設へ訪問し、施設内ラウンド、ゾーニングやPPE(個人用防護具)の指導を行っている。また、看護協会専門看護師派遣事業活動として、介護老人保健施設および特別養護老人ホームのラウンド、ゾーニング、マニュアルの作成支援を行っている。

長町病院は、一般・定期健診、協会けんぽ生活習慣病予防健診、被扶養者特定健診、仙台市特定基礎健診および特定保健指導、仙台市肝炎ウイルス健診、HB肝炎訴訟検診、大腸がん検診、前立腺がん検診、宮城県被爆者健診、保育園園児健診などを行っている。ホームページに健診問合せシステムを整備したこともあり、すべての健診項目で件数が増加している。また福島県双葉町と浪江町より委託を受け、住民に対する甲状腺エコー検診を実施している。メディカルフィットネスのびのびながまちは、新型コロナウイルス感染症対策として人数および回数制限をして実施している。保育所等からの小児受託健診数は3事業所211件である。

古川民主病院の診療圏内では、新型コロナウイルス感染症により健診事業を休止した医療機関も有るが、感染防止を徹底し新規も受け入れている。

泉病院は、一般健診、協会けんぽ生活習慣病予防健診、仙台市特定・基礎健診、大腸がん健診、前立腺がん健診を行っている。4自治体から脳検診の委託を受けている。

若林クリニックは、仙台市の基礎健診・特定健診、事業者が行う定期健診、雇入時健診を受け入れている。また、仙台市介護予防・日常生活支援総合事業に参加し、通所型短期集中予防サービス(元気応援教室)を行っている。要支援1・2の認定を受けた地域住民、豊齢力(基本)チェックリスト該当者のうち、介護予防ケアマネジメントの結果やプログラム参加による身体機能及び生活行為の改善が見込めると判断した地域住民に対し、転倒予防や足腰の筋力保持・増進のために自宅でも出来る運動や体操等を指導し、生活機能の改善・向上に取り組んでいる。

仙台錦町診療所は、協会けんぽ生活習慣病予防健診及び特定健診、仙台市基礎及び特定健診、事業者が行う法定定期健診、雇入時健診、海外派遣労働者健診、特定業務従事者健診(夜勤者健診)、特殊健診(有機溶剤健診、石綿健診、電離放射線健診、じん肺健診)、腰痛健診、振動業務健診など、所内健診と巡回健診を行っている。

くりこまクリニックは、新型コロナウイルス感染症の関係で栗原地域の基本健診は地域の医療機関で実施することとなり、受け入れ健診数が増加した。

古川民主病院歯科と長町病院附属歯科クリニックは、宮城県歯科医師会成人歯科検診(成人40件、後期高齢者18件、妊婦健診18件)を実施している。

2020年度健康診断受診数(延べ:件)
  法人合計
職域健康診断
(雇入・定期等)
17,312
特殊健診
(有機・石綿等)
732
行政指導健診
(VTD・腰痛等)
531
特殊健診
(自治体等)
2,587
がん検診
(大腸・乳等)
19,943
人間ドック
(脳ドック含む)
955
仙台市基礎健診 869
4)研修及び研究事業

長町病院、泉病院、古川民主病院は、坂総合病院の協力型臨床研修病院として初期研修医、みちのく総合診療医学センター(日本プライマリ・ケア連合学会認定プログラム)からの後期研修医を受け入れている。坂総合病院は、東北大学病院の協力型臨床研修指定病院としての地域医療研修施設である。古川民主病院歯科は、東北大学病院歯科医師臨床研修プログラム協力型施設である。また、東北大学をはじめ全国の大学や専門学校から、医師、薬剤師、看護師、リハビリテーションなどの医学系学生実習、医師・看護師などの医療職を目指す高校生などの体験学習も受入れている。2021年度も新型コロナウイルス感染症により受け入れ数や内容に影響を受けている。

坂総合病院は、東北大医学部から5年次地域医療実習受け入れ数8名、6年次高次医学修練受入数1名、5年次の産婦人科臨床修練が3名である。他大学からの受け入れは、個別計画実習52名、医学部合計受入数64名である。学生からの申し込み時には見学希望科を確認し、内科外来、手術の様子、リハビリテーション科、救急科、深夜当直など幅広い診療場面を見学できるようにしている。また、松島医療生活協同組合松島海岸診療所の協力も受け地域医療を学べるようにしている。薬学部では、東北医科薬科大学薬学部から1名の受け入れである。

長町病院は、東北大学附属病院から2年目初期研修1名、6年生高次修練(リハ科)5名、5年次地域医療実習1名を受け入れている。例年の地域医療研修や地域医療体験研修、高校生1日医師体験の受け入れは無い。

泉病院は、協力型臨床研修病院として初期研修医を13名受け入れている。

古川民主病院は、リハビリテーション科実習として4校(内訳: 県内 3校、県外 1校)から5名(PT 1名、OT 4名)を受け入れている。歯科では、仙台保健福祉専門学校から2名、仙台青葉短期大学から2名を受け入れたが、例年の宮城高等歯科衛生士学院からは新型コロナウイルス感染症の影響で受け入れは無い。

臨床栄養学実習は、坂総合病院、泉病院、長町病院で受け入れている。外来・入院の栄養指導見学、病棟の栄養管理・NST、各回診・カンファランス見学、給食管理・厨房作業体験、残食調査など、病院栄養士業務を幅広く体験する内容となっている。受け入れ数は4校(県内)24名(受け入れ事業所: 長町6、泉8、坂10)である。

リハビリテーションは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により養成校側から中止される一方で、実習の受け入れ先が無くなった学生を急遽受け入れたケースが少なからず発生した。受け入れ数は6校(内訳: 県内5校,県外1校)22名(受け入れ事業所: 坂5名、長町9名、泉3名、古川5名)である。

社会福祉士実習は、複数の大学から依頼があったが指導体制が整わず受け入れていない。

看護実習は県内9校から310名を受け入れている。新型コロナウイルスの感染防止のため、実習時間と日数を短縮している。学校側でも校内での感染者発生により実習中止となったケースもあり、その分の補講を新たに設定し受け入れている。

高校生看護師体験は、28校(内訳: 県内27校、県外1校)から47名を受け入れている。感染防止のため全てオンラインとし、画像と動画で看護師になる過程と仕事内容を説明している。年の近い先輩看護師が、自分の経験や現在の仕事の様子、キャリアモデルなど説明している。

訪問看護・介護分野では、県内5ヶ所の看護大学・看護学校から103名の在宅看護学実習を受け入れている。新型コロナウイルス感染症のため利用者宅への同行訪問は出来ていないが、事例検討や訪問看護に関する講義は好評を得ている。

職業体験 受入数  
医学部 64名 東北大学医学部地域医療実習・高次医学修練等
薬学部 1名 東北医科薬科大学臨床実務実習
看護学部 413名 学校数14校
うち、訪問看護・介護分野 103名 学校数5校
リハビリテーション 22名 学校数6校
社会福祉士 なし  
管理栄養士 24名 学校数4校
歯科衛生士 2名 学校数2校
職業体験 受入数  
高校生医師一日体験 10名 学校数7校
高校生看護師体験 47名 学校数28校

理事長は、糖尿病代謝科東北大学医学部臨床教授を担っている。

坂総合病院の副院長は、東北大学医学部臨床准教授、産婦人科・小児科診療部長は婦人科の東北大学医学部臨床教授、他に医療技術系専門学校の講師を担っている。

長町病院は、院長は東北大学医学部臨床教授、医師による医療系専門学校・短大・大学などでの講義、認知症看護認定看護師や理学療法士等がWebなどで地域や学校向けに講義を行っている。

泉病院は、院長が仙台市認知症地域医療支援事業企画会議構成員(仙台市地域包括ケア推進課)として仙台市の各種企画での講師をしている。

古川民主病院附属歯科は、所長が東北大学歯学部臨床教授を担っている。

訪問看護・介護分野では、1看護学校より要請を受け、非常勤講師として在宅看護論の講義をしている。また、2013年度から行っている喀痰吸引3号研修は、85名に基礎・実地研修を行っている。宮城県介護支援専門員・主任介護支援専門員研修講師、宮城県看護協会主催の訪問看護入門セミナーの講師、介護・福祉サービスネットワークみやぎ主催研修会の講師をしている。地域包括支援センターも地域住民や地域の介護支援専門員研修等の講義を行っている。

5)訪問看護・介護、通所、在宅介護支援事業、障害者の医療・福祉事業

定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行っている事業所数は3ヶ所、地域包括支援センター事業運営も含めた介護支援専門員数は34名となる。ケアステーション等での育児ヘルプサービスでは、グループホームとの施設契約として、介護保険4施設、障害者福祉2施設、ディサービス3法人4事業所、定期巡回随時対応型業務連携契約は2事業所である。一方で、2021年4月に若林クリニック居宅介護支援事業所を休止し、2021年12月で古川民主病院通所リハビリテーション事業を止めている。新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として、通所リハビリは4事業所で営業を縮小し、2022年3月発生の地震により2事業所で営業を休止している。

新型コロナウイルス感染症が終息しない中でも、地域の医療機関、介護事業所、自治体、地域住民等と連携し支援継続に努めている。各事業所は依頼には断らず対応する姿勢で看護・介護の連携を図り幅広く支援している。訪問看護は他法人施設との委託契約が増え、活動の幅が拡大している。

坂総合病院は七ヶ浜町の総合支援事業としてのリハビリ指導など、新型コロナウイルス感染症の感染対策を徹底しながら、18件の戸別訪問と介護予防教室を開催している。

長町病院は、仙台市の通所型短期集中予防サービス「元気応援教室」は14年間の功績が認められ、2021年に仙台市内3施設のみの「仙台市モデル事業」に選定されている。従来の通所型の集団指導だけではなく、訪問による個別指導を組み合わせることにより個別性を重視した地域に根ざした支援となっている。2021年度の9月~3月まで延べ利用数69件である。

6)住民との協力による健康増進事業

坂総合病院は、塩釜市、多賀城市の災害公営住宅において健康相談会を13回開催し、職員含め236名が参加している。離島浦戸諸島・桂島においても健康相談会を開催し、区長はじめ16名の島民が参加した。病院からは、医師・看護師・臨床検査技師・健康運動指導士の専門職が参加し、健康相談・血圧測定・血管年齢測定・健康体操を実施した。なお、新型コロナウイルス感染防止のため、例年開催している健康まつりやスーパー等の店頭で行う青空健康チェックは中止した。

長町病院は、新型コロナウイルス感染症の影響により、健康まつりと青空健康相談会は中止し、班会や健康講座、サークル活動は縮小している。2020年度に行った「生活上のお困りごとアンケート」で寄せられた会員の要望を踏まえ、「助け合いの会」を2021年5月にスタートさせ、活動件数は60件、ボランティアの参加は延べ130名となる。助け合い活動は草取りや剪定、家具の移動、清掃など多岐にわたり、登録ボランティアは20名を超えている。

泉病院も例年の健康まつりや夏休みこども一日病院体験などは中止している。新たな取り組みとしてオンライン健康講演会を実施し、健康と生活をテーマとした講演会は10講演延べで94名、健康相談会は3回開催され13名が参加している。新型コロナウイルス感染症の影響で、特設会場を設けたオンライン健康講演会、物づくりなどの体験型イベントは中止したが、地域からの参加総数は前年度と同程度となっている。

古川民主病院は、これまで健康啓蒙活動として3地域(大崎市古川、加美町、美里町)で健康まつりを開催してきたが全て中止している。地域住民への健康講話会は「コロナ禍の健康づくり」や「歯の健康・からだの健康」などの内容で8回開催したが、コロナ前の半分以下と参加数となっている。

くりこまクリニックも健康まつりは中止し、野外活動としてグランドゴルフ大会を開催している。

仙台錦町診療所産業医学健診センターも健康まつりや健康講話は中止している。感染対策を徹底しながら「絵手紙」、「手芸」などのサークル活動を少人数で再開している。

若林クリニックは、施設内の一室を「ゆったりサロン」として環境整備し、地域住民の主体的参加による健康増進活動に取り組んでいる。いきいき教室、ヨガ教室、ノルディックウォーキング等、18分野の地域サークルがあるが、新型コロナウイルス感染症の感染状況により開催を休止した時期もあり、健康まつりも中止している。

歯科事業部は、古川民主病院歯科、長町病院附属歯科クリニックともに、地域で開催された健康講話会に講師を派遣している。毎年開催している歯科健康相談会は、長町病院と古川民主病院の健康まつりが中止となり実施できていない。「保険でより良い歯科医療を(宮城の会)」に参加し、電話相談会には医療スタッフを派遣している。

7)総合的な社会保障確立のために

地域住民の健康権を守るため、4病院と地域包括支援センターで社会福祉士等による医療生活相談援助に取り組んでいる。

坂総合病院の医療圏内では、身寄りのない患者や家族親族から協力が得られない患者が増えている。身体機能低下や認知機能低下による日常生活における支援や諸制度の手続き、退院後の住まいなど、家族の協力を得ることが通常と言われている事を誰がどのように支援していくかが課題となっている。また、埋葬に関する相談も自治体によって手順が異なり時間を要する状況がある。家族関係や人との繋がりの変化が見られ、近年の社会背景の実態に応じた行政の関わり、そして地域の関係機関との連携は重要となっている。また、患者本人だけでなく、家族も困り事を抱えているケースが少なくない。家族の健康面や就労、経済面など、多重問題を抱えている。このようなケースでは、子どもへの影響や貧困の連鎖も心配される場合がある。個々の支援に留まらず、多機関多職種と連携しながら包括的で横の繋がりを持った横断的な支援を行っている。

長町病院は、身元引受人不在の患者支援が非常に多くなっている。他医療機関に断られ、最後の砦として当院に転院してくるケースも多数見られる。同時期に複数人入院されることも多く、公的サービスや行政では賄えない部分の支援に日々奮闘している。身元引受人不在者には、医療機関や行政等の関係機関と連携して対処できる体制が不可欠である。また、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し、無料低額診療の申請相談が増えている。元々非正規雇用や自営業者が多い地域であり、無料低額診療の利用を機に生活の立て直しが図れるよう支援している。

泉病院は、社会的背景のある患者の受入れ先となる医療機関となっている。施設が限られる中で、生活を維持する課題が多い患者の入院依頼が多く寄せられている。無差別平等の理念の下、患者の背景に関わらず積極的な受入れを行っており、公正な医療の実践を行っている。身寄りのない患者、経済的問題のある患者、認知症や精神疾患のある患者等、多面的な支援を要する患者に対し、多職種で課題を共有しながら、他機関とも連携し支援を行っている。また、昨年設置した無料低額診療の看板や県のホームページを見たという方からの受診相談が増加している。

古川民主病院は、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減少の方、低所得が常態化し医療費支払いが滞っている方など、生活困窮者からの相談が多くなっている。無料低額診療事業の申請に留まらず、生活保護等の諸制度の活用、自立相談支援センター、困窮者支援団体、フードバンク等と連携した支援を行っている。また、身元引受人不在患者の退院調整目的として他医療機関から紹介を受けることが多く、療養後の退院先探しに難渋している。地域包括支援センター等からの困難事例の問い合わせや、高齢者やネグレクトによる障害者の入院や介護医療院への入所などで諸団体等と連携している。

南光台地域包括支援センターには、地域住民から認知機能低下後の権利擁護に係るもの、精神疾患関連、安否確認、虐待相談と多岐にわたり相談が寄せられている。随時、行政や地域住民等と連携し対応している。コロナ禍においても継続した地域づくりを進めるため、感染予防対策として少人数での圏域会議や研修会を企画し開催している。地域住民との連携事例では、地域包括支援センターと住民との連携でゴミ出し地域支援隊を結成し支援している。

社会福祉士等による相談件数(延べ:件)
  相談件数
法人合計 34,780
坂総合病院 13,518
長町病院 12,476
古川民主病院 2,575
泉病院 4,809
他事業所 1,402

以上