事業計画

2023年度(令和5年度)宮城厚生協会 事業計画

2023年4月~2024年3月

はじめに

当法人は設立理念である「無差別・平等」の考えのもと、いのちと暮しを守ることに力を尽くし、地域住民の健康と健やかな生活を支える事業に取り組み、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と国民の生存権と文化的生活の向上のため公益財団法人として役割を果たします。

2023年度は中長期計画の折り返し年となります。計画に基づき、法人が定めた理念のもと事業を進めます。

理念

公正な医療と介護・福祉を提供し、安心して暮らせる地域づくりに貢献します

ありたい姿
  1. 力をあわせて患者・利用者につくしている
  2. 誇り、やりがい、成長する喜びをもって働いている
  3. 安定した経営をとおして社会的責務をはたしている
戦略
  1. 少子高齢社会に対応し、医療介護を一体的・包括的に前進させる
  2. 教育育成を通して、働き甲斐のある職場づくりを推進する
  3. 安心して地域で暮らせる切れ目のない医療介護を提供する

Ⅰ. 事業経営をめぐる環境認識

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症は3年が経過し感染拡大は8波まで繰り返され、多くの医療機関や介護施設でクラスターが発生し、国内での感染者数は3,300万人、死亡者数は7万人を超えています。大流行すれば多くの命を奪う深刻な病気ですが、致死率などの低下を背景に感染症法上の位置づけは5月に2類から5類に見直されます。医療機関への財政的支援も徐々に縮小される見込みであり、高齢者など重症化リスクが高い人を対象とした入院処置が無くなれば、コロナ感染者の受入れ病棟を短期間で再転換しなければなりません。事業継続としては大きく影響を受けることになります。

経済が及ぼす貧困と健康格差

コロナ禍やウクライナ侵攻など、世界を巻き込む重大事件の続発が国内経済に大きな影響をもたらしています。非正規雇用者の雇止めや物価の高騰により生活困窮者は増大しています。子供に焦点をあてると、ストレス反応の訴え、不登校や自殺者が増加していますが経済的問題を抱えた家庭環境が影響していると言われています。診療現場では病気を治すだけでなく、患者さんを取り巻く環境と直面する困難をも意識しなければなりません。否定的な感情の裏には必ず何かの理由があり、それに気づき見過ごさない意識を高めなければなりません。

高齢化と生活環境

医療の進歩で日本人の平均寿命は年々延びています。一方で「健康寿命」との差が目立つようになっています。老々介護が増え、介護疲れによる被介護者への虐待行為や命を絶つという痛ましい事故が後を絶ちません。核家族化、他人に助けを求めることへの抵抗感、金銭的な理由などにより高齢者の孤立につながっています。介護者が一人で悩みを抱え込まないための地域づくりや公的支援、介護サービスにつなげる取り組みが重要です。

医療保険制度改革と負担の引上げ

少子高齢化で社会保障費が増大するとして、高齢者の医療負担が見直されました。原則一割負担とうたってきた制度の根幹が大きく変わる中で、一定の所得がある75歳以上の「後期高齢者」は、医療機関での窓口負担割合が引き上げられています。次期の医療保険制度改革では、全世代で支えるとし、後期高齢者保険料の引上げ、被用者保健における負担能力に応じた報酬調整の導入が検討されています。また、これまでの介護保険は第1号被保険者(65以上)と第二号被保険者(40~64歳)の負担割合は人口比に応じて見直しているため、概ね一人当たりの保険料は同額となっていましたが、現役世代の負担上昇を抑制するとし高齢者負担率を見直すことも検討されています。自己負担が増すことにより、受診控え、持病の悪化、癌や生活習慣病の発見遅れなど、必要な医療と介護サービスが受けられなくなる人々の増大が懸念されます。

Ⅱ. 2023年度事業計画

宮城厚生協会は公益認定法人として、公益事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くします。

平和憲法の理念を高く掲げ、すべての人が等しく尊重される社会をめざし、これまでの歩みを発展させながら人権が大切にされる社会を目指します。地域住民とともに力を合わせ、より広範な人々と手を結び貧困と格差や少子高齢化社会がもたらす変化に真正面から向き合い、日常の医療・介護の実践、権利としての社会保障の向上を求めながら、地域の人々の健康と生活を支える事業活動を進めます。

泉病院の建て替え工事を計画通り進め2024年度のオープンを目指します。

  1. 患者の立場にたつ診療事業、無料低額診療事業
    • 坂総合病院は地域医療支援病院として入院を中心とした救急・専門医療を充実させ、新型コロナウイルス感染症(新興感染症等)を加えた5疾患6事業に取り組みます。行政機関と共に地域の医療機関や介護施設等との連携を重視します。また、坂総合クリニックの宮城県認知症疾患医療センターはその役割を担います。
    • 各病院・診療所は、地域での医療・介護の連携を大事にし、規模や地域の医療環境などによって異なる外来機能と入院機能及び介護事業、新型コロナウイルス感染症への対応も含め地域から求められる役割を担います。
    • 高齢者入居施設「はなみずき」は、低所得者や在宅医療を必要とした方でも入居できるホームとして切実な地域需要に応えます。介護医療院は家族による在宅介護が難しい方の療養を支えます。
    • 第二種社会福祉事業として、無料低額診療事業を重視します。
    • 「医療相談」「生活相談」「介護相談」に積極的に取り組みます。
    • 自然災害での医療支援・救援活動に取り組みます。
  2. 保健予防・集団的健康管理事業
    • 新型コロナウイルス感染症による健康診断の受検控えが解消しつつあります。「協会けんぽ」健診事業の充実、専門性を生かした特定健診・保健予防活動を重視します。疾病予防事業としての運動療法、労働安全衛生法に基づく産業医活動に取り組みます。
    • 振動病・頚肩腕障害・職業性腰痛、被爆者健診及び被爆二世健診、アスベストによる健康障害やじん肺に関する健康相談等、労働者・住民の健康問題に取り組みます。
  3. 医療従事者の研修教育、医学・看護学等の研究事業
    • 東北大学と東北医科薬科大学との連携による医師・薬剤師養成、みちのく総合診療医学センターでの家庭医・総合診療医養成に取り組み、地域医療を担う医師・薬剤師を育てます。
    • 専門研修のため国内外大学・研究機関への研修派遣を行い、地域医療に貢献します。
    • 救急医療・地域連携などの地域開放型研修会の開催、救急救命士の認定研修、認知症対応能力の向上を目的とした研修会等を実施します。
    • 医師・薬剤師・看護師・リハビリ職・社会福祉士・管理栄養士・歯科衛生士をはじめとした、医療・介護系学生の研修・実習の受け入れ、育成を行います。
  4. 訪問看護・介護、通所、在宅介護支援事業、障害者の医療・福祉事業
    • 多職種連携で要介護高齢者・障害者を支えます。
    • 悪性疾患への対応、障害児・重度の乳幼児への訪問、ケアステーションを核とした在宅看取りへの対応など、在宅での療養と介護を支えます。
    • 医療度の高い遷延性意識障害者、重度の障害者の療養を支えます。
    • 24時間定期巡回・随時対応サービスなどの在宅サービス強化やリハビリテーションなど自立支援型サービスの計画的な人材育成を行います。
  5. 地域住民との協力による健康増進事業
    • 地域住民と協力して「健康相談会」「復興公営住宅等での健康相談会」「路上生活者等の健康を守る健診・食事会」等の健康増進に取り組みます。
    • 県内に避難している福島第一原発被曝者等の健診、被災住民の健診や相談会等に取り組みます。
  6. 総合的な社会保障制度確立に関する事業
    • 地域住民の健康権を守るため、社会福祉士などによる医療相談・生活援助に取り組みます。
    • 社会保障制度が活かされるよう、医療・介護現場の気づきを大事にしながら改善援助に取り組みます。
以上