救急医療の充実を表す指標のひとつがここに取り上げる心肺蘇生法の成功でしょう。救急車で患者さんが運ばれて、医師や看護師が心臓マッサージや人工呼吸のかたわら様々な処置をします。その結果心臓の動きが戻り、入院して治療継続できるかどうかが一つめのポイントです。このような患者さんの多くはとても重篤な状態ですので、入院後に死亡することも多いのが現状です。入院後も治療が奏功し退院できたかどうかがもう一つのポイントとなっています。

脳は血流が滞って5分ほどで脳死となります。それ以前に救命救急処置が開始されるかどうかが大切になります。したがって救急隊が駆けつける前からこの処置が開始されなければ成功率も上がらないということになります。アメリカでは日本に比べて格段に救命率が高いと言われています。病院の技術や体制ばかりでなく、地域社会の中でどれだけ救急医療への意識が高いかも重要な要素と考えられます。

全日本民医連のデータでは、心肺停止して救急搬送された患者さんが生存して退院した患者さんの中央値は3年連続0%となっています。いかに生きて帰すことが難しいかが分かります。2013年の300床以上、DPC病院、基幹型臨床研修指定病院の13病院に絞って比較してみても、生存退院の中央値は4.1%です。

2013年のデータを見ると、心拍再開率は20.5%。蘇生処置の標準化が定着しているので、ここ数年の大きな変化は見られない傾向にあります。生存退院は3%前後で変化が無く、やはり目撃者による心肺蘇生術の重要性が求められております。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と
分母・分子の項目名
解釈
備考 半年分で集計
分子 A)心拍再開し入院した患者数
B)そのうち生存退院した患者数
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分母 救急搬入された来院時心肺停止患者数 退院患者のうち、入院契機病名が蘇生に成功した心肺停止(I46.0)
医療の質向上・公開推進事業」データより
(全日本民医連 2011年60施設、 2012年70施設、 2013年83施設参加)
A.心拍再開割合
年度 最大値 中央値 最小値
2011年 100.0% 26.5% 0.0%
2012年 100.0% 14.3% 0.8%
2013年 100.0% 18.2% 0.0%
B.心拍再開し生存退院した患者の割合
年度 最大値 中央値 最小値
2011年 100.0% 0.0% 0.0%
2012年 50.0% 0.0% 0.0%
2013年 38.5% 0.0% 0.0%