2020年度

2020年度(令和2年度)事業報告

宮城厚生協会は、設立趣意書に示される理念に基づき医療と介護・福祉事業を通じ、いのちと暮しを守ることに力を尽くし、地域住民の健康と健やかな生活を支えるための事業を行っている。

新型コロナウイルス感染症がもたらした世界的な危機に、医療提供体制の機能分化と効率化を進めてきた日本の医療・福祉・公衆衛生は機能の弱体化として現れている。厚生協会は、感染リスクへのストレスや緊張にさらされ続けながらも全力で立ち向かい、新たな感染症への対応と通常診療を両立させ、公益事業の推進と医療機関としての役割を果たしている。

事業概要

1)患者の立場にたつ診療事業

坂総合病院は、塩釜地区休日急患診療担当二次病院施設として地域の輪番制を担っている。地域医療支援病院として、主に塩釜市、多賀城市、利府町、松島町、七ヶ浜町の2市3町にある病院との入院連携、坂総合クリニックとの外来連携により、地域の方々が安心して医療にかかれるように取り組んでいる。長町病院は、回復期リハビリテーション病棟および地域包括ケア病床の活用で急性期後の社会復帰に貢献している。在宅療養支援病院(機能強化型)として高齢者医療・在宅医療を支え、糖尿病をはじめとする慢性疾患医療、健診等保健予防事業に取り組んでいる。泉病院は、脳血管系疾患の診断と内科的治療、神経難病の診断とリハビリ、認知症の診断、整形疾患も含めたリハビリテーション領域で社会復帰を支援している。古川民主病院は、宮城県第二次救急医療施設として大崎地域の救急医療を担い、大崎地域唯一の「在宅療養支援病院(機能強化型)」に「介護医療院」を併設し、在宅医療・入院医療・介護サービスを一体で提供している。

2020年度外来及び入院数(延べ数:人)
  外来患者数 入院患者数
法人総合計 374,556 203,419
坂総合病院 51,155 107,241
長町病院 39,113 44,660
古川民主病院 36,171 25,032
泉病院 33,855 26,486
診療所群 172,950  
歯科群 41,312  
2)生活困窮者への無料・低額診療事業

当法人は、第二種社会福祉事業として社会福祉法第2条第3項9号に規定する「生活困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業(無料低額診療制度)」を、坂総合病院、長町病院、泉病院、古川民主病院、坂総合クリニック、坂総合病院附属北部診療所、くりこまクリニック、中新田民主医院の8事業所で実施している。

坂総合病院は、東日本大震災で被災した非課税世帯の国民健康保険加入者及び後期高齢保険加入者への医療費の一部負担金免除措置が終了になったことを受け、その対象だった方が経済的理由により受診抑制や中断とならないよう無料低額診療事業の適用を継続している。また、安心して入院加療ができるよう、非課税世帯の入院患者に対しても無料低額診療事業を適用している。無料低額診療の対象者は50代~60代以降が多く、保険種別では国民健康保険が半数を占める。40代~50代では非正規雇用の低所得者が多く、疾患別では糖尿病や呼吸器疾患、高血圧などの慢性疾患やがん患者(化学療法での高額医療)からの申請が多くなっている。事業周知では、ホームページへの掲載やポスターを掲示している。また、地域活動団体(友の会)での講演、事業所全体で困っている患者を把握し、活用へ繋がるように受付や会計を担当する事務職員や医師・看護師等への学習会を開催している。患者からの相談以外に、地域包括支援センターや自立支援相談窓口、福祉事務所とも連携している。

長町病院が所在する地域は新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前から貧困世帯が多く、申請件数も前年度並みである。多くが低年金の高齢者やワーキングプア労働者である傾向は著変無い。コロナ禍の影響を受けた外国人留学生やDV被害者などが、行政から無料低額診療事業を案内されつながるケースもあり、太白区役所、太白区社会福祉協議会、若林区役所に無料低額診療案内書を設置している。

泉病院は無料低額診療事業案内書を仙台市泉区役所に設置している。地域包括ケア会議などを通じて、地域包括支援センターや社会福祉協議会でも事業を紹介している。6月までは月200件を超えが7月以降激減し、11月、12月は入院での該当申し込みは無く半減した。2021年に入り相談件数は増加傾向にある。区役所より無料低額診療実施事業所として案内を受けた方からの相談や、コロナ禍による収入減少を受けた方々を無料低額診療につなげることで、受療権を守る取り組みとなっている。

古川民主病院は無料低額診療実施医療機関としてホームページや友の会だよりに掲載し、地域で開催される健康啓蒙学習会等においても紹介している。ホームページからの問い合わせや、治療中断患者からの申請も増えている。

くりこまクリニックでの無料低額診療申請者はいずれも高齢独居であり、年金のみで生計を立ている方である。地域的には世帯所得が低い世帯が多いが、無料低額診療制度の活用に抵抗感がみられる。

中新田民主医院は、コロナ禍の影響での雇い止めや減収により医療費支払い困難患者への制度案内として、院内掲示や友の会だよりで広報を行っている。

坂総合病院附属北部診療所では、生活費の逼迫から受診出来ないなどの相談を受け無料低額診療を紹介し、坂総合病院と連携し制度活用に結び付けている。

2020年度の無料低額診療患者数(延べ数:件)
  無料低額診療患者数
法人合計 37,691
坂総合病院 16,620
長町病院 8,673
泉病院 1,457
古川民主病院 1,969
診療所群 8,972
3)保健予防・健康管理事業

健診活動とともに各種健診を実施し疾病予防事業を行っている。

坂総合病院では、一般健診、協会けんぽ健診、自治体の子宮癌検診や脳検診、育児健診の他、被爆者健診(26)なども受け入れている。また、感染症予防事業費等国庫負担金交付要綱に基づく事業(県内では宮城県立がんセンターと2ヵ所のみ)として、塩釜地域2市3町の自治体乳がん健診(がん検診推進事業)を受け入れている。国の風疹追加対策の風疹の抗体検査(118件)、予防接種(19件)を実施している。

新型コロナウイルス感染症の対応において、感染管理認定看護師が宮城県長寿社会政策課運営指導班へ協力して、介護事業者、有料老人ホーム、高齢者施設への研修会の講師活動を3件、県内にある施設を訪問しての施設内ラウンド、ゾーニングやPPEの指導および講義を34件行っている。また、看護協会専門看護師派遣事業活動として、介護老人保健施設および特別養護老人ホームのラウンド、ゾーニング、マニュアル支援を4件行っている。

坂総合クリニックの「メディカルフィットネスのびのび」は、新型コロナウイルスの影響により2020年3月から休止している。

長町病院は、一般健診、協会けんぽ生活習慣病予防健診、仙台市特定健診及び特定保健指導、自治体が実施する肝炎ウイルス健診、HB肝炎訴訟健診、大腸がん検診、前立腺がん検診、宮城県被爆者健診、保育所の園児健診等を行っている。また、福島県から委託を受け避難している双葉町住民の甲状腺エコー健診を行っている。

長町病院メディカルフィットネスのびのびながまちは、コロナの影響により2020年3月上旬から一時中止し、6月から再開では人数制限など縮小し行っている(登録会員数45名、延べ利用者数1,978名)。被爆者健診(25件)、福島県から避難している住民の甲状腺エコー健診(双葉町6件)、小児科健診(保育所等)は3ヶ所から委託を受けている(234件)。

泉病院は、一般健診、協会けんぽ生活習慣病予防健診、仙台市特定・基礎健診、大腸がん健診、前立腺がん健診などを行っている。脳検診は4自治体から委託を受けている。運転従事者脳検診が増加している。

古川民主病院は、新型コロナウイルス感染症の影響で健診数は前年度を下回ったが、感染防止対策を徹底し新規事業所も受け入れている。

若林クリニックは、仙台市介護予防・日常生活支援総合事業に参加し、通所型短期集中予防サービス(元気応援教室)を行っている。要支援1・2の認定を受けた地域住民、豊齢力(基本)チェックリスト該当者のうち、介護予防ケアマネジメントの結果、プログラム参加により身体機能及び生活行為の改善が見込めると判断した地域住民に対し、転倒予防や足腰の筋力保持・増進のために自宅でもできる運動や体操等を指導し、生活機能の改善・向上に取り組んでいる。当事業は年間3クール制となっているが、自治体判断により第1クールと第2クールが中止し第3クールのみ実施(3名)している。

仙台錦町診療所は、協会けんぽ生活習慣病予防健診及び特定健診、仙台市基礎及び特定健診、事業者が行う定期健診、雇入時健診、海外派遣労働者健診、特定業務従事者健診(夜勤者健診)、特殊健診(有機溶剤健診、石綿健診、電離放射線健診、じん肺健診)、腰痛健診、振動業務健診など、所内健診(1,774件)、巡回健診(6,773件)を実施している。

古川民主病院歯科クリニックと長町病院附属歯科クリニックは、宮城県歯科医師会成人歯科検診(52件)と後期高齢者歯科検診(21件)を実施している。

2020年度健康診断受診数(延べ:件)
  法人合計
職域健康診断
(雇入・定期等)
16,810
特殊健診
(有機・石綿等)
561
行政指導健診
(VTD・腰痛等)
416
特殊健診
(自治体等)
2,516
がん検診
(大腸・乳等)
16,232
人間ドック
(脳ドック含む)
1,083
4)研修及び研究事業

長町病院、泉病院、古川民主病院は、坂総合病院の協力型臨床研修病院として初期研修医、みちのく総合診療医学センター(日本プライマリ・ケア連合学会認定プログラム)からの後期研修医、東北大学病院の協力型臨床研修指定病院としての地域医療研修施設である。古川民主病院歯科クリニックは、東北大学病院歯科医師臨床研修プログラム協力型施設である。また、東北大学をはじめ全国の大学や専門学校から、医師、薬剤師、看護師、リハビリテーションなどの医学系学生実習、医師・看護師など医療職を目指す高校生などの体験学習も受入れている。

坂総合病院は、東北大医学部からの5年次地域医療実習受け入れ数は2名、(予定者7名、コロナ感染予防の観点から中止)、6年次高次医学修練受入数は0名(予定者1名、コロナ感染予防の観点から中止)、他大学からの受け入れでは、個別計画実習31名、医学部からの受入数33名、東北医科薬科大学薬学部臨床実務実習の受入数2名である。前年までは全ての疾患を学習するため全病棟で実習していたが、新型コロナウイルスの影響で病棟を限定して実習せざるを得なくなった。その他の疾患はカルテ閲覧と実習担当薬剤師からの講義で補っている。

泉病院は、協力型臨床研修病院として12名の初期研修医を受け入れている。

長町病院は、東北大学医学部付属病院から地域医療研修(2年目研修医)2名、医学部5年次地域医療実習4名を受け入れている。高校生1日医師体験および東北大学1年時の早期地域医療実習は新型コロナウイルスの影響で中止している。地域医療研修、実習では大きな目的の一つである内科外来診療において、発熱患者など新型コロナウイルス感染の可能性がある方の診察見学を控えざるを得ず大幅に制限された。その影響で入院診療も対応できる患者が制限され、またリハビリ分野でも家屋調査や訪問リハビリなどの外出機会の制限があり、経験できる件数内容が著しく限られた。訪問診療についてはご家族のご理解もいただきながら対応し、実際に訪問することで患者の住む環境を体感していただくことができている。研修医たちは退院後の生活の場面を見ることがほとんどない大学の研修の中、とても貴重な体験だったと一様に感想を述べている。

古川民主病院は、みちのく総合診療医学センターからの後期研修医1名を受け入れている。古川民主病院歯科クリニックは宮城県高等歯科衛生士学院から2名、仙台青葉学院短期大学歯科衛生士学科から2名学生実習を受け入れたが、新型コロナウイルス感染防止の観点から宮城高等歯科衛生士学院では見学のみの実習となり、仙台医療福祉専門学校は受け入れを中止している。

看護学校臨地実習は、2病院6ケアステーションで受け入れている。学校種別は大学2校、短大2校、3年制専門学校1校、准看学校1校、高等看護学校1校となっている。看護学科は基礎・老年・小児・母性・統合・在宅の各臨地実習を受け、学生への学習指導を行っている。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い一時実習受け入れ中止したが、学校からの要請を受け、感染対策授業の修了を確認したうえで日数・時間短縮、人数制限で受け入れている。当法人の実習は、多職種連携の実態、外来患者指導の状況、在宅での地域医療と看護の実際など、看護と介護、入院と在宅の連携なども指導できる特徴があり、要請校から指導も丁寧であるとの評価を得ている。県内では産科・小児科の入院施設が少ないこともあり、現在の受け入れ校以外からも要望があるが応えきれていない。

高校生看護師体験は、例年夏休みや冬休みを中心に40校200名程度受け入れていたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い中止とした。代替え企画として2020年11月から「高校生看護師オンライン懇談会」を3回実施(11名参加)している。病院体験ができないなかで、オンラインでも若手看護師からの仕事の実際や進学説明を聞くことで、看護師・助産師への進路決定の一助となると好評を得ている。

臨床栄養学実習では、坂総合病院、泉病院、長町病院で受け入れている。外来・入院の栄養指導見学、病棟の栄養管理・NST、各科回診・カンファランスの見学、給食管理・厨房作業体験など、病院栄養士業務を幅広く体験する内容となっている。

リハビリテーション部門での実習受け入れ数は県内5校から12名(長町7名、坂3名、泉2名)である。新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、臨床実習を中止した学校もあり受け入れる側も人数を制限しての受け入れとなっている。

社会福祉士では、東北福祉大学より長町病院で2名受入れ予定だったが、大学の方針で新型コロナウイルス感染対策のため学内実習に切替えとなった。代わりに東北福祉大学学内実習への講師派遣依頼を受け、坂総合病院と長町病院からオンライン形式でソーシャルワーカーの実践について講義を行っている。

歯科衛生士では、仙台青葉学院短期大学は従来通り実施しているが、新型コロナウイルス感染対策の観点から宮城高等衛生士学院では見学のみとなり、仙台医療福祉専門学校は中止となっている。

職業体験 受入数  
医学部 33名 東北大学高次医学修練2名
地域医療実習7名 他
薬学部 2名 東北医科薬科大学臨床実務実習
看護学部 141名 学校数9校
うち、訪問看護・介護分野 31名 学校数3校
リハビリテーション 12名 学校数5校
社会福祉士 1名 学校数1校
管理栄養士 11名 学校数3校
歯科衛生士 4名 学校数2校
職業体験 受入数  
高校生看護師体験 11名 学校数8校

坂総合病院は、副院長が呼吸器内科の東北大学医学部臨床准教授、産婦人科・小児科診療部長が婦人科の東北大学医学部臨床教授、他、医療技術系専門学校の講師を担っている。

長町病院は、院長が東北大学医学部臨床教授、副院長は仙台医療福祉専門学校講師を担っている。認知症認定看護師としての講師活動では、看護協会「認知症対応力向上研修」、仙台徳洲看護専門学校「老年看護」、宮城大学看護学科「外来における看護師の役割」、日本看護協会認知症認定看護学科での講義を行っている。

泉病院は、院長が仙台市認知症地域医療支援事業企画会議構成員(仙台市地域包括ケア推進課)として仙台市の各種企画での講師を担っている。仙台市からの要請で、リハビリと看護師4名が、認知症キャラバンメイト(認知症対応養成講座など指導者認定)として講師を担っている。

古川民主病院歯科クリニックは、所長が東北大学歯学部の臨床教授を担っている。

訪問看護・介護分野での講師活動では、1看護学校より要請を受け非常勤講師として在宅看護論の講義を担当している。介護事業部による介護職員等によるたんの吸引等第三号研修には、基礎研修3名、実地研修57名を受け入れている。南光台地域包括支援センターでは、地域の町内会や自主サークル等からの依頼を受け講師を派遣している(5回)。

5)訪問看護・介護、通所、在宅介護支援事業、障害者の医療・福祉事業

地域連携を重視し、訪問看護・訪問介護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションを行っている。

月平均利用者数は、訪問看護828名、訪問介護327名、定期巡回型訪問介護看護28名、居宅介護支援給付管理数576件である。定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行っている事業所数は2ヶ所、地域包括支援センター事業運営も含めた介護支援専門員32名を配置している。高齢者生活援助事業対象者は無かったが、育児ヘルプサービスは1事業所で実施し、利用者数は6名、延べ利用回数は48回となっている。

坂総合病院は、七ヶ浜町へのリハビリ指導など総合支援事業として、戸別訪問14件、介護予防教室を13件行っている。

長町病院は、仙台市通所型短期集中予防サービス「元気応援教室」の延べ参加数は81名、運動指導回数40回、口腔・栄養改善指導回数は20回となる。新型コロナウイルス感染症対策のため、3クールのうち1クールが中止となり、定員も10名から5名へ減らしている。

介護事業部では、地域の医療機関・介護事業所・自治体・地域住民等と連携し、コロナ禍においても積極的な支援に取り組んでいる。看護・介護の連携により医療依存度の高い方、重い障害を持つ方、ターミナルケア、小児ケア等を実施している。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い利用者が濃厚接触者や検査対象者となるケースもあったが、感染予防対策を徹底したうえでケア継続に努めている。

6)住民との協力による健康増進事業

坂総合病院は新型コロナウイルス感染防止のため、例年開催している健康まつりをはじめスーパー等の店頭で行う青空健康チェック、地域での健康講演会は中止している。塩釜市、多賀城市の災害公営住宅での健康相談会は14回開催し、職員を含め214名が参加している。例年行っている離島浦戸諸島での健康相談の訪問活動は9名で12件を訪問し、健康状態などの聞き取り活動を行っている。また、友の会会員向けに生活状況アンケートを実施し、不安・ストレスによる心と身体の不調、経済的困窮、困った時に相談相手がいない等の声に、訪問活動等を行い支援につなげている。

長町病院は、新型コロナウイルス感染症の影響により、健康まつり、青空健康相談会は中止し、班会や講演会、サークル活動は縮小して行っている。生活上の困りごとアンケート調査を11月に実施し、直接来院した6名の生活相談も行っている。

泉病院は、医師による認知症・神経難病等をテーマにした健康講演会、健康相談会、健康増進を目的とした健康まつりは感染予防のため中止している。規模を縮小したストレッチ体操や地域医療講演会とし、15回延べ112名が参加している。夏休み子ども一日病院探検、高校生看護体験は中止している。

古川民主病院は、3地域(大崎市古川、加美町、美里町)の健康まつりを中止している。健康啓蒙活動として、医師による新型コロナウイルス感染症予防学習会を開催し好評を得ている。外出を控える高齢者が多くなる中で、定期受診中断患者にはコメディカルが訪問し健康状態の把握と療養指導を行っている。

古川民主病院歯科クリニックは、地域で開催された健康講話会に講師を派遣している。毎年開催している歯科健康相談会は、長町病院と古川民主病院の健康まつりが中止となり実施できていない。

若林クリニックは、施設内の一室を「ゆったりサロン」として環境整備し、地域住民の主体的参加による健康増進活動に取り組んでいる。いきいき教室、ヨガ教室、ノルディックウォーキング等、18分野の地域サークルがあるが、新型コロナウイルス感染症の影響により開催を縮小している。一人暮らしの方を対象とした茶話会を4回開催している。

くりこまクリニックは、毎年開催する「健康まつり」は地域の方々が400人以上集い「待たれるまつり」になっている。健康まつりでは骨密度健診体験、頚動脈エコー体験健診、体脂肪測定などをおこない、参加者から好評を得ている。サークル活動も活発になっており、パークゴルフサークルも立ち上がり交流が盛んに行われている。

仙台錦町診療所産業医学健診センターは、毎年100人以上が参加する健康まつりは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止している。また、毎月10名以上が参加する「囲碁」や「絵手紙」、「てづくり」などのサークル活動、年3回開催している健康講話も中止している。友の会たよりの健康増進欄を充実させ、ホームページに専用ページを設けるなど健康につながる情報発信に力を注いでいる。

7)総合的な社会保障確立のために

地域住民の健康権を守るため、4病院と地域包括支援センターで社会福祉士等による医療生活相談援助に取り組んでいる。

坂総合病院は、40代、50代の非正規雇用者でワーキングプアと呼ばれている状況の患者については、無料低額診療事業の活用だけでは生活改善が難しい状態にあることから、生活保護や身体障害者手帳や障害年金等々、利用できる社会保障制度の紹介など相談対応をしている。また、自立支援相談窓口への相談や活用も増えている。コロナ禍においては、もともと不安定な状況に置かれている非正規雇用の患者が解雇や所得が減るなど、さらなる困窮に陥っている状況がみられる。身寄りがない方や家族と疎遠になっている方は、施設入所や転院での保証人問題や受入れ先に難渋するケースがみられる。また、患者だけでなく家族も疾患や問題を抱えており、家族全体への援助が必要となり多数の関係機関との連携が必要になっている。産科では、パートナーと婚姻予定がなくシングルで出産・子育てとなる患者が多い傾向がみられることから、産前産後のサポート体制を自治体保健師と連携し整えている。

長町病院では、身元引受人不在の患者支援が非常に多く、成年後見制度首長申立を依頼するケースも多数みられる。アルコール依存症患者や若年の難病患者が利用できる社会資源の少なさ、利用しにくさ等、社会的課題の改善や充実に向けての活動が必要となっている。また、児童虐待やDV事例もあり、事業所内で他職種へも周知することで早期発見や虐待防止につなげている。

泉病院は、コロナ禍での収入減少により、生活苦を訴える患者、家族からの相談を受け、無料低額診療を糸口に、国保料の減免、身体障害者手帳、生活保護など諸制度へつなげられたケースが複数みられる。母子父子家庭では、子どももバイト収入が減るなど、食べるものにも困り、フードバンクを紹介する事例もみられた。経済的事情により介護や家事の担い手となっているヤングケアラーもおり、患者への支援に留まらず、家庭、地域に存在する経済的課題や、生活面においての総合的な相談にのることのできる窓口、受け皿が必要となっている。

介護事業分野でも、経済的困難を抱えながら生活していた方が身体的な問題が生じ、生活を継続することが難しくなって相談されるケースが増えている。また、認知症高齢者で独居の方が、生活を継続できなくなってしまってから把握されるケースも増えている。

南光台地域包括支援センターでは3件の孤独死事例があり、圏域での困難事例に丁寧な対応と支援を重ねている。11月に「新型コロナ感染対策困りごとなんでも電話相談」が開催され、介護支援専門員を派遣している。

社会福祉士等による相談件数(延べ:件)
  相談件数
法人合計 36,982
坂総合病院 14,804
長町病院 11,207
古川民主病院 4,652
泉病院 5,165
南光台地域包括センター 1,154

以上