2019年度宮城厚生協会新入職員辞令交付式

2019.04.02

4月1日、2019年度宮城厚生協会新入職員辞令交付式が執り行われました。理事長あいさつをご紹介します。

理事長あいさつ

(公財)宮城厚生協会理事長 小熊 信

皆さんおはようございます。公益財団法人宮城厚生協会理事長の小熊です。まずは皆さんの当法人への入職を職員一同歓迎いたします。2019年度に当法人に入職された新入職員は86人であり、このように多くの若者が最初の職場として当法人を選択されたことに、理事長として大変うれしく思っております。

法人の沿革、概要、理念

最初に当法人の沿革、概要について紹介します。
宮城厚生協会の原点は、約100年前の1914年に医師 坂定義が、皆さんが今いらっしゃるこの地に私立塩竃病院を開設したことに始まります。その後1937年に創始者の名を冠して坂病院に改名し、1950年に坂病院を中核事業所とした財団法人宮城厚生協会を設立しました。創始者である坂先生は、当時の貧しい地域社会で貧富の差に関わらず無差別の医療を実践し、その理念は坂総合病院として105年、宮城厚生協会としては70年という長い歴史の中で醸成され、受け継がれてきました。2013年により公益性の高い公益財団法人宮城厚生協会として再発足して、現在の法人は4病院、7診療所そして7か所の訪問看護ステーションを擁する県内最大の民間医療事業法人に成長してきました。そして「患者の権利を尊重し、患者に共感し患者と協同して、平等・安全の医療をめざしていく」ことを我々の組織理念と位置づけた上で、差額ベッドを持たずに無料低額診療制度を導入して、公平で平等な医療と介護の事業をめざしています。

法人を取り巻く外部環境の変化、動向

さて2010年代に入り我が国の医療、介護をとりまく環境は、これまでに類を見ない規模で大きく変貌しつつあります。今後わが国で想定される少子化と高齢化によって医療、介護の需要環境が量的、質的に大きく変動する中で地域包括システムが導入され、これに伴って医療機関は高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つの医療機能に明確に類型化されようとしています。そして機能分化されたそれぞれの医療機関は、介護事業所も含めて相互に連携、協力していかなければならない時代となってきています。

このように法人をとりまく外部環境が大きく変化していく中で、現在当法人はこれらの変化に適切に対応すべく2016年に開始した経営構造転換5か年計画を始めとした様々な組織改革に挑戦しているところです。これは、当法人の理念を今後の厳しい環境下でも地域住民に恒常的に提供できるように、経営基盤の強化を主要な目的としています。さらに各医療機関の機能が各地域で半ば強制的に類型化されようとされる中で、当法人の既存の事業所における各診療機能を見直しながら中長期的な事業構想の作成に取り組んでいます。また、今後の主要な経営戦略として、組織全体の生産性を向上させていくために、職員一人一人のパフォーマンスを最大限に引き出せるように、現在の単一な年功序列型人事制度から目標管理を基軸に据えた新たな人事評価制度の導入を検討しています。このように現在当法人では、今後の法人に大きな影響を与えるような種々の組織改革に取り組んでいるところです。

法人が新入職員に望むこと

そこで当法人に組織の一員となった皆さんに、理事長として2つのことを望みたいと思います。

今申し上げたように、医療介護事業の外部環境が大きく変動する中で、これら一連の組織改革を推し進めていくためには、従来の既成概念や慣例主義にとらわれない職員一人一人の意識改革が求められています。政治家チャーチルは、訪英した日本の若い皇太子に次のような励ましの言葉をかけたそうです。「人生を長く生きてきた者は、過去の失敗や不幸、苦い体験を引きずり、これから抜け出すことができずに保守的になりがちである。しかし若者はこのような呪縛にとらわれることが少なく、勇気さえあれば主体的に前向きな姿勢に立つことができる」。 本日から当法人の組織の一員となる皆さんが、潜在的に持ち合わせている過去に引きずられない主体的で、前向きな姿勢でより積極的に組織運営に関与し、新風を吹き込むことによって組織改革の推進に貢献していくことを望みます。

2点目として望みたいことは、自分の人生の価値観と我々法人の組織理念との関わりについて、これからの職場での活動を通して考えていただきたいということです。 あと2時間足らずで新元号が発表され、1か月後には歴史的な改元を迎えます。改元は、社会的必然性を持たない人為的なイベントですが、一つの時間的区切りとして平成の時代における社会の変遷と自分の人生を振り返り、その総括を今後の自己の生き方と社会の在り方を考えていく際の一つの糧として位置付けていくことは、意義のあることと思います。 平成時代の30年間を振り返ってみると、平成の時代は災害が多く、IT化が急速に進化するなど多彩な時代の変遷がみられました。他方、政治経済的にはグローバル経済の発展が世界的規模で推進される中で貧富の差が拡大し、社会的格差も増幅された時代といえます。私たち法人は、公平、平等という人類にとって普遍的な価値観が軽視され、経済的、社会的弱者が置き去りにされるような社会や政治の在り方に反対して、そのアンチテーゼとしてこれまで「基本的人権を尊重して無差別、平等な医療介護の提供」を社会に訴えてきました。

他方皆さんがこれまで生きてこられた平成時代の20数年間は、両親をはじめとして学校の先生や友人などの周囲の人たちの支援や保護のもとに生きてこられたと思います。しかしこれからの皆さんは、社会人として社会的責任を付託されながら、自分の人生を自ら切り開いていかなければなりません。そのための行動指針は、これから皆さんが醸成していかなければならない人生観や価値観に大きく影響されるはずです。皆さんがこれからの人生観や価値観を醸成させていく過程で、当法人での仕事や様々な活動、経験を通して前述した当法人の組織理念が皆さんの人生観、価値観に同化されていき、皆さんが宮城厚生協会で末永く働いていくことの意義を見いだしていくことを心から望みます。

結び

最後に、健康に留意しながら法人内外で様々な経験や学習を通して人間として大きく成長し、社会人として活躍されることを心から期待して、歓迎のあいさつといたします。本日は入職おめでとう。