産業医学センター

仙台市青葉区上杉3-2-28 アクス上杉3F

塵肺1問1答ページを更新するにあたって

私共の診療所には、塵肺患者さんが結構通院してますし、属する財団法人「宮城厚生協会」全体では、約300人の患者さんを治療中です。宮城県北に1200年の歴史を有する細倉鉱山が、18年程前に閉山し、元鉱夫の健康問題が社会問題化し、私共は塵肺や振動病の健診を実施し、診断、治療、労災申請等に取り組んできました。その中で、離職後にかなりの程度で、進行する方がいること、新たに塊状の陰影(大陰影)をみる例も数例確認し、ポジトロンCTを用いて離職後10年を経ての進行状況を画像で示すことも出来、日本産業衛生学会や第9回国際職業性肺疾患学術会議にて報告してきました。この過程で、主に、裁判の中で、かなりの点について論争が続いていることを知りました。しかも、その発言内容は、学会や研究会でのものと相当違っているように思いました。

我が国では、鉱山や炭坑は、もうほとんど影を消しています。しかし、道路や鉄道を始め、粉塵の出る作業は、これからも多いとおもいます、その範囲は鉱山や炭坑よりも広範に存在します。又、閉山後の元鉱夫、坑夫は、離職後進行の可能性(危険性)を抱え、親族、知人を頼って、全国中の分散しているはずです。「塵肺の軽少化」を始めとする種々の意見を知るにあたって、再度、塵肺の基礎的知識の確認と普及が、産業保健に取り組みつつ、呼吸器科医師の一人である私の仕事と考えました。 今回の公開内容は、全てではありません。例えば、「IARCによる珪酸の発癌性報告」と、我が国内の一部の方からの「報告書無効」の意見(裁判証拠」等最も活発に議論されている項目については、主な点については、(I)塵肺法と運用上の問題点、Q94~Q101にまとめてありました。ようやく我が国でも合併症に肺癌が加わり、年1回のヘリカルCTもなされる制度になりました。その点を含めてQ104まで新しい問題点についても解説を加えました。

英語訳もこれを機会に全面更新しましたので参考にご覧下さい。我が国での塵肺を最も多く生んできた炭鉱、鉱山が激減し、トンネル工事の坑夫の塵肺も裁判の活動等で対策が進んできています。しかし、現在でも多種多様の原因での塵肺や職業性肺疾患が現れています。私共のところでは、塵肺・職業性肺疾患の早期発見・医学的診断・リハビリを含む治療・労災認定・職場改善等に総合的に取り組んでいます。これまでもこのホームページを通じて多々相談のご連絡がありましたが、これからも多いにご利用戴ければ幸いです。

2005年4月5日 仙台錦町診療所・産業医学センター 所長 広瀬俊雄