高齢化社会を迎えて「いくつになっても人の世話にならず、自立した生活を送りたい、充実した生きがいのある人生をおくりたい」と願い、そのために「脳の健康を維持したい」と考えるのは、どなたも同じだと思います。

脳ドックはそうした思いに答えたいと出発した「脳の健康診断」です。
泉病院で「脳ドック」とはいわずにあえて「脳の健康相談」といっているのも、そうした考えによるものです。

 


脳ドックを利用される方々の理由は大きく2つあるようです。

1つは「認知症が心配」というもの、もう一つは「脳卒中が心配」というものです。
泉病院でも主としてその2つを標的にした内容にしています。

脳ドックがはじまり、急速に普及したのは脳の検査方法が格段に進歩したおかげです。その中心になるのが「MRI」という診断機器です。

MRIの特徴は放射線照射の必要がないこと、CTスキャンよりも高い解像度が得られること水の状態を手掛かりに組織の質的変化に関する情報が得られること水が動いているところ(血管など)を工夫によって画像に出来る事などが上げられます。

要するに「血管も含めた精細な画像が簡単に、しかも安全に得られる」のです。しかしこの事は逆に考えれば「MRIの限界が脳ドックの限界」ということでもあります。


 
MRIはその高い解像度のために脳内の、脳そのものと質的に違う病気についてはまず見落とす事はありません。脳腫瘍などはほとんど問題なく見つかります。

 古い脳卒中のあとなどもみつけることができます。むしろみつかりすぎる、という皮肉も発生します。

 
脳ドックが普及し始めた頃、「40歳以上に高率で隠れ脳梗塞がみつかる」ということが新聞報道で話題になったことがあります。

そのうちの多くは「気づかないうちにおこっていた古い小さな梗塞=隠れ梗塞」といっていいものと思いますが、一方で似てはいるが脳梗塞とはいえない、「MRIでしかみえない」ものが含まれていた可能性があります。

 これはMRIが普及してきてはじめて問題になった現象で、その後脳ドック研究会でガイドラインが出されたときに整理されました。

しかし、現在でもこうした「似てはいるけれど脳梗塞とはいえない」ものがどんな意味をもっているのかについては不明な部分も多く、脳ドックでの結果の説明を受けていただく上で、すっきりしない事の一つになっています。


MRA(MRIによる血管撮影)



頚部血管の動脈硬化による狭窄(頚部血管エコー検査)
 
血管の状態も比較的良く分かります。
といってもMRIでみえるのは比較的太い血管だけです。

脳の内部を走る細い血管(脳出血のときに破れる血管)などはほとんど見ることはできません。
ですから脳ドックの対象となる病気は太い血管で、しかも主として動脈の病気ということになります。

具体的には動脈がふくらむ「動脈瘤」と動脈がほそくなる「狭窄」です。ただ注意しなくてはいけないことがあります。

それはMRIで見ているのは血流という現象であって、血管自体ではないということです。

動脈瘤の中の血流には乱れがあります。そのため動脈瘤も、大きなものがかえって見えにくいことがあります。

一方、小さな動脈瘤は血管自体との区別が困難となって見えにくいという問題があります。

狭窄も同様で、実際の狭窄の程度より少し強く見えることが多いようです。

また血管のうねりや分かれる分岐部でも血流の乱れがおこっており、時に狭窄と区別困難なことがあります。

 
アルツハイマー型認知症は相当進行してからはじめて脳が縮んできます。MRIでわかるときにはもう、進行しているときとなります。

ただ、日本人に比較的多い「血管性認知症」は脳梗塞が多数集まっておこってくるタイプのものです。
脳の中にその原因となる隠れ梗塞がないかどうかを見ることが、将来の危険性をある程度予測することになります。

 
脳ドックとくにその中心となるMRIには大変すぐれた能力がある一方、限界もあることがおわかりいただけたと思います。

当院でも「脳の健康相談」では、MRIだけに頼らず多方面から脳卒中の原因となる「脳の動脈硬化」を把握することをめざしています。

また動脈瘤の有無については見落としを減らすよう、怪しい箇所は広めに「精密検査必要」として拾うように注意し、必ず担当した放射線技師と複数の医師で読影するようにしています。

認知症については他の検査も同時に受けていただくことをおすすめしています。

なによりも「脳の健康相談」を利用していただいたことが今後の健康管理に役立つよう、結果説明には十分時間をかけてその後のアフターケアーについても提案、相談させていただいています。

このようにそれぞれの医療機関もそれぞれに工夫を凝らしていると思います。

近くの医療機関の脳ドックを利用するかどうかは、その病院がどんな姿勢で取り組んでいるのかをよくみて、決めてみたらいかがでしょうか。
 



日頃は健康だが、家族の中に脳卒中にかかった方がいる場合は、脳ドック受診をお進めします。とくにくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤は、親子・兄弟にかかった方がいると存在する可能性が高くなると指摘されています。

高血圧症などのいわゆる生活習慣病がある方は脳ドックよりも保険診療のなかでMRIなどの利用を相談してみるのもいい方法と思います。